リファレンス 数値の根拠と考え方
📏 圧の絶対境界線
P1 脱血圧下限の目安 −50 mmHg。−80 で吸着(chattering)・サイズ不足を疑う
P2 人工肺前圧上限の目安 400 mmHg。超えたら人工肺の血栓・消耗
P3 送血圧上限の目安 350 mmHg。超えたら送血不良
ΔP(P2−P3)絶対値よりトレンド。急な上昇=人工肺の血栓化
RPM機種上限が溶血との境界。添付文書で確認
数値は必ず機種の添付文書・施設プロトコルで確認してください。
🎯 目標流量 とカニューレ
目標流量BSA × 2.0–2.4 L/min
カニューレ外径OD (mm) ≈ Fr / 3
血管占有率<66% 推奨 / >83% 危険(VA=下肢虚血、VV=うっ血・DVT)
Hagen-Poiseuille:V ∝ (Pin−Pout)·r⁴ / (8·η·l)。半径は4乗で効く=「太く・短く」。 カニューレを選んだ導入時点で最大流量はほぼ確定し、後からRPMを上げてもボトルネックは超えられない。
⚡ DO2駆動型管理
DO2Hb × 1.34 × SaO2 × Flow × 10
VO2≈ BSA × 125
DO2/VO2>3.0 理想 / 2.0–3.0 要観察 / <2.0 危険域
iDO2CI × (1.34·Hb·SaO2/100 + 0.003·PaO2) × 10
溶解酸素(0.003·PaO2)は全DO2の 1–4% のみ。残り96–99%はHb結合酸素。 DO2を上げたい時は PaO2 ではなく CI(流量)と Hb を増やす。PaO2はSaO2を100%にするための押し込み圧に過ぎない。
🫁 VA-ECMO 酸素ターゲット(新常識)
右橈骨 PaO2 100–150Safe Zone
150–300急性脳障害リスク上昇(OR 2.33→4.16)
>300院内死亡率が明確に上昇(OR 〜6.10)
SvO2≥70% あれば全身の酸素需給は保たれている
高濃度酸素は「毒」:脳血管収縮+活性酸素(ROS)による再灌流障害 → 腎血流・脳血流低下。 FiO2は導入直後から急に下げず、安定を見ながら 1.0→0.8→0.6… と段階的に。 出典:2025年 Anesthesia & Analgesia(PMID 41100353、481例)。
🔄 リサーキュレーション(VV)
率(%)(脱血側SO2 − SvO2) / (送血側SO2 − SvO2) × 100
配置大腿-大腿は先端近接で高リスク。大腿(脱血)-内頸(送血)が標準
疑うタイミング流量・FiO2十分なのに SpO2 が上がらない
対応:カニューレ先端間の距離を離す/配置変更を医師と相談/過剰なECMO流量を見直す/脱血側・送血側の血ガスを定期比較。 二腔式単一カニューレは送血ポートを三尖弁へ正確にポジショニング。
🎭 南北症候群 / Harlequin(VA 大腿送血)
自己心拍が回復し、かつ自己肺の酸素化が悪いと、上行大動脈〜右上肢は自己肺由来の低酸素血、下半身はECMO由来の高酸素血、という差別的低酸素になる。

・モニタSpO2・血ガスは必ず右橈骨動脈(右手)で。
・対応:人工呼吸のサポート強化、送血カニューレ位置の再評価、必要ならVAV化(送血の一部を上大静脈へ返す)。
🫀 LV過伸展 / venting(VA)
VAでは後負荷が上がり、左室が駆出できないと血液が左室・左房・肺静脈にうっ滞 → 肺うっ血・肺出血、心内血栓。

サイン:脈圧の低下(<10–15 mmHg)、大動脈弁が開かない、肺うっ血の進行、左室拡大。
venting策:ECMO流量の一時減量、強心薬(inotrope)、IABP、Impella併用、経中隔/左室ドレナージ。チームで早めに協議。
本ページは教育目的の要約です。原著・ガイドライン・機種の添付文書を確認し、施設プロトコルと担当医師の判断を優先してください。